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KEY NUMBER 数字で読む2020

KEY NUMBER 数字で読む2020 ①

ニュースにはさまざまな数字が出てきます。それらの中には、後世にその時代を振り返るときとても重要な意味をもってくるものもあるのではないでしょうか。ここでは『現代用語の基礎知識2021』の中で2020年の「キーナンバー」となる数字を集めた特集ページを再録し、全4回に分けてお届けします。(文=桧山信彦 design=kozpaq)

 

 地球滅亡までの時間

2020年1月、アメリカの科学誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ(原子力科学者会報)』は、地球最後の日までの残り時間を概念的に示す「終末時計」を、過去最短の100秒と発表した。同誌は原爆を開発した「マンハッタン計画」に参加したシカゴ大学の研究者らにより1945年に創刊、「終末時計」は47年に核戦争の危険性を警告する目的で創設された。時刻の決定はノーベル賞受賞学者を含む科学者で構成される委員会が行う。初回の47年は残り7分で、91年には冷戦終結を受けて17分まで針が戻っていた。同誌は、過去最短の残り2分だった18年、19年よりさらに20秒針が進んで100秒と危機が迫った理由として、アメリカによるイラン核合意からの離脱、北朝鮮非核化交渉の停滞、米露の中距離核戦力(INF)全廃条約の失効を挙げ、また気候変動問題では、若者たちの世界的なデモにより意識は高まったが、温室効果ガス排出量削減へ向けた各国政府の行動は具体的な対策に乏しく、困難に立ち向かうには程遠いと指摘した。


 アマゾンの熱帯雨林がCO2の「発生源」になる年

南米アマゾン地域の熱帯雨林は15年以内に二酸化炭素(CO2)の吸収源から「発生源」へ変わるおそれがあるという研究論文が、2020年3月、イギリスの科学誌『ネイチャー』に発表された。欧州とアフリカを拠点とする研究チームは、アフリカの11カ国に位置する破壊されていない森林から収集された樹木の成長と枯死の50年以上に及ぶデータを調査し、アマゾン熱帯雨林の300以上の区域で収集した同様のデータと比較。さらに今後20年の樹木の減少傾向の推定モデルを作成した。これによると、調査対象となったアフリカの森林のCO2吸収能力は30年までに14%低下し、アマゾンでは35年までにゼロになると予測された。これまでの森林破壊によりアマゾンのCO2吸収能力は急速に失われ、全体の約20%がすでにCO2発生源になっているとする調査もある。地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」で想定されているCO2排出量削減シナリオの一部は、森林が今後も長期にわたりCO2を吸収できることを前提としており、この点を見直した気候変動緩和戦略が、今後必要とされている。


 ジョージ・フロイドが警官に首を押さえ付けられた時間

2020年5月25日、アメリカ・ミネソタ州のミネアポリスで、白人警官が偽札使用の容疑で拘束した黒人男性ジョージ・フロイドの首を8分46秒間にわたり膝で押さえ付け、死亡させるという事件が起きた。身動きできない状態でフロイドは、少なくとも16回「息ができない」と訴えたが、警官は首にかけた膝をどけず、フロイドが意識を失った後も押さえ続けた。殺害に関与した警官デレク・ショービンは第2級殺人で訴追され、ほかの3人の警官は殺人の幇助・教唆で訴追された。この様子を収めた動画が拡散されると、翌5月26日にはミネアポリスで人種差別と警察の暴力に抗議する大規模なデモが発生、「Black LivesMatter(黒人の命を守れ)」というスローガンの下、抗議活動は瞬く間にアメリカ全土に拡大した。この事件は、黒人にとって不利なシステムが社会構造に組み込まれている「システミック・レイシズム」という問題を浮彫りにした。警察による暴力以外にも、教育、雇用、融資、住環境、医療保険、監獄制度といったあらゆる面に人種差別が及んでおり、こうした「システム」に立ち向かう抗議行動は、その後、世界にも波及した。


香港「国安法」を支持した国

2020年6月30日、中国全人代常務委員会は、香港での反体制活動などを取り締まる国家安全法制度の実施法を可決、同日夜に施行した。実施法となる「国家安全維持法」は、(1)国家の分裂、(2)中央政府の転覆、(3)テロ活動、(4)外国勢力などと結託して国家の安全を脅かす、の4種類の行為を禁じ、最高刑は無期懲役となる。中国の治安当局が香港に出先機関「国家安全維持公署」を設置し、事案の内容しだいで法執行など管轄権を行使するという。スイス・ジュネーブで現地時間6月30日に開かれた第44回国連人権理事会では、中国による香港国家安全維持法導入の賛否が問われ、「中国に反対」が日本や欧州などの27カ国だったのに対し、「賛成」がその2倍近い53カ国だった。53カ国を代表してキューバが発表した共同声明では、香港は中国の切り離せない一部であり、香港の事案は中国の内政で、他国は干渉すべきではない。国安法は国家の立法権に属するもので人権問題ではなく、人権理事会で議論すべきではない。この措置が「一国二制度」の長期安定、香港の長期繁栄・安定に資すると考える、などとした。一方、イギリスはオーストラリアやカナダ、日本、ニュージーランド、スイスなど27カ国を代表して共同声明を発表。香港国安法は「一国二制度」が保障する高度な自治と権利、自由を損なうとして、中国に再検討を求めた。

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