KEY NUMBER 数字で読む2020 ②
ニュースにはさまざまな数字が出てきます。それらの中には、後世にその時代を振り返るときとても重要な意味を持ってくるものもあるのではないでしょうか。ここでは『現代用語の基礎知識2021』の中で2020年の「キーナンバー」となる数字を集めた特集ページを再録し、全4回に分けてお届けします。(文:桧山信彦 design=kozpaq)
日米安保条約改定から60年
1960年の日米安全保障条約改定から60年。日本とアメリカの相互協力をうたった現行の日米安保に調印した1月19日を前に、2020年1月17日、両政府は外務・防衛担当の計4閣僚の連名による共同発表で、日米同盟について「両国の平和と安全を確保するに際して不可欠な役割を果たしてきており、今後もその役割を果たし続ける」と強調した。この条約は5条でアメリカが日本を防衛する義務を、6条で日本がアメリカに施設や区域を提供する義務を定める。条約が発効したのは6月23日。この日は太平洋戦争末期に米軍との地上戦が展開された沖縄戦の終結から75年の慰霊の日でもあった。沖縄では県民の4人に1人が犠牲になる悲惨な戦闘が繰り広げられ、1972年の本土復帰後も、過重な基地負担を強いられてきた。沖縄県の玉城デニー知事は日米安保改定から60年を迎えるに当たり「日本の安全保障が大事ならば、基地負担のあり方も日本全体で考え、その負担を分かち合うべき」と述べ、全国の約7割の米軍専用施設が沖縄に集中する状況の解消を訴えた。政府は沖縄県民の反対にもかかわらず、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設にともなう新基地建設工事を続けており、総工費は9300億円にふくれあがっている。新基地建設に反対する人たちが辺野古海岸のテント村で座り込みを始めたのは、政府が辺野古沖の海底ボーリング調査を行った2004年4月19日で、座り込みを始めてから20年9月21日で6000日となった。防衛省は19年12月、辺野古に建設する代替施設の本体工事の工期を5年から9年3カ月に延ばす考えを示した。完成までに12年かかる見込みで、普天間返還は30 年代にずれ込むことになる。しかし、これまでも度重なる予定の変更や遅延があり、同省が立てた計画どおりに移設が実現すると考えている人は少ない。
2021年度の防衛予算
防衛省は2021年度予算の概算要求で、過去最大となる5兆4800億円を計上する方針を示した。防衛費は12年末の第2次安倍内閣発足以降、8年連続で増加、20年度当初予算では過去最大の5兆3133億円を計上していた。政府は20年6月、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の山口・秋田両県への配備断念を決めた。迎撃ミサイルの推進補助装置であるブースターが演習場外に落下するおそれを排除できないことが判明したためだ。防衛省はイージス・アショアの代替策について、陸上配備から洋上配備に転換し、(1)弾道ミサイル迎撃に特化した専用艦を含む護衛艦型、(2)民間船舶活用型、(3)石油採掘用プラットフォーム型の3案から年内に絞り込む考え。21年度防衛費の概算要求には、陸上イージスの代替関連費は含まれておらず、最終的な総額はさらに膨らむ公算が大きい。また、概算要求に含まれる、F35Bステルス戦闘機の導入、F35Bを搭載するための「いずも」型護衛艦の改修、長距離巡航ミサイルや電子戦機の導入経費などは、いずれも安倍前政権から菅政権に検討が継承された「敵基地攻撃能力」の保有につながるもので、この是非をめぐっては今後も議論が続けられる。
2020年度の国家予算
2020年6月12日に第2次補正予算が成立して、20年度の一般会計予算は、当初予算、第1次補正予算と合わせ、計160.3兆円となった。当初予算は102兆6580億円で過去最大だったが、1次補正で25.7兆円、2次補正でさらに31.9兆円と、過去最大規模を更新した。補正の財源はすべて国債の追加発行で賄い、総額90.2兆円。2次補正後の公債依存度は56.3%とリーマン・ショック後の09年度の水準を上回り過去最高となり、累計国債発行額は20年度末で1033兆円と初めて1000兆円を超える見込み。さらに新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に立つ企業や家計に対して、3次以降の補正編成も避けられないとみられる。
緊急事態宣言の発令から全面解除までの日数
2020年4月7日、政府は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令。北海道と首都圏の東京・埼玉・千葉・神奈川の計5都道県を含む全面解除をしたのが5月25日で、発令から49日間だった。経済への深刻な影響を懸念した前倒し解除時には「第2波への備え」が議論になった。厚生労働省の報道発表によれば、全国のPCR検査の新規陽性者数は4月10日の708人をピークに緊急事態宣言後は徐々に減り、1人の感染者が何人にうつすかを示す実効再生産数も5月にはほぼ1を割り込んでいた。経済的打撃への刺激策として政府が打ち出したGo Toトラベルキャンペーンが7月22 日に開始(東京を除く)されるころに感染者数は再び急増、8月7日には新規陽性者数が1日で1595人に達した。しかし、感染による死亡者数は緊急事態宣言下、5月8日の49人がピークで、7月以降の3カ月間では9月4日の19人を最大として感染者数に比例して増加することはなく、世界的に日本の死亡率がなぜ低いのか、また、秋・冬にかけ、感染が再々拡大した場合の第3波へどう備えるかが議論されている。